2017年元日の忘備録
2017年
あけましておめでとうは、0時1分に気づいて伝えた。今年のガキ使、年越しを知らせてくれなかった気がする。
今の我が家で過ごす最後の正月。
「大切にしましょう」
妙に張り切る母親は、ワインの酔いが回っていた。妹は、地元の友人らと外へ繰り出し、父親は夜更かしが苦手な性分ゆえ、とっくにいびきをかいていたので、母親の相手は僕だった。
「確かに」
そう思いながら、僕は母親ではなくスマホを見つめていた。
「みんな楽しそう!」
年明けになにもしていないことに妙に感傷的になった僕は、早めに眠った。
起きると、11時を回っていた。
どうやら僕は、近くの浄真寺へ初詣に向かう外の雑踏に気づかずに12時間眠っていたようだ。
寝正月は、寿命に悪影響をもたらすとライフハッカーか何かで読んだのに…
「おはよう。」
あけましておめでとうより先に、いつもと変わらない挨拶を繰り出したことに、家族から非難を少し浴びて、僕は1人朝食をとった。
テレビではニューイヤーなのに、妹がしきりと昨日の紅白を見直していた。
市販の割り箸で市販の栗きんとんを食す。僕はお餅が嫌いなので、雑炊はお餅を抜いて食した。平和だ。
平和ではなかった。
僕は、「自分で入れたんだから頑張れ」と周りから思われているだけで実は店長に懇願されただけのバイトのシフトがあったからだ。
24時間年中無休の牛丼屋にしては、はじめて今年の大晦日の深夜と元旦は閉店していた。
僕は、寝ぼけ眼で店の鍵を開け、無人の機械まで眠った今年で6年目の勤務になる店で、
「あけましておめでとう」
を言った。
誰かの挨拶の代わりに、入店アナウンスがこだましてじわった。
たった1人で誰も入ってくることのない店で、店を開けるためにバイト人生となる”仕込み”をする非日常が、正月なのだと感じさせた。
とても切なくなった。
店を開けた。
誰も来ないだろうと思った。
混んだ。
そこには、初詣客がと思われる者はいない。
初老以上の背中が寒そうな男性ばかり来た。
高級住宅街などと揶揄されるこの街にも独り身は多いのだと思った。意外だった。
暖房の熱風と、牛鍋から立ち上る熱気とで火照る体と裏腹に心は寂しく感じられた。
非日常を感じながらもどこか満たされぬ自尊心。遊んでワイワイ年を越したかったのかもしれない。
2017年、僕の始まりは、冷たかった。
忘れないようにしよう…
いい年にしたいのだから🐂